2025年5月には、複数の企業が新たなERP導入プロジェクトを発表しました。国内外でのクラウドERP活用が加速する中、SAP社・マイクロソフト社の製品を軸にした導入事例が相次いでいます。 本記事では、三菱自動車工業、日立建機、原出伸銅所、武州製薬の4社による最新導入動向をまとめ、それぞれの戦略・選定理由・システム構成を比較可能な形でご紹介します。 📌主要ERP製品 徹底比較ガイド|無料ダウンロードERP導入を検討中の方向けに、SAPやOracleをはじめとした主要クラウドERPの特徴・違い・選び方を1冊にまとめました。最新トレンドを踏まえ、機能比較/導入の注意点/SaaS型ERPの選定基準まで網羅しています。初期検討の情報収集や、社内検討資料の下地としてもご活用ください。👉 資料をダウンロードする(無料)三菱自動車工業、間接費管理基盤としてSAP Concurを導入 SAP Concurによる経費精算改革と働き方革新 三菱自動車工業は、働き方改革と業務効率化を目的として、経費精算・出張管理のクラウドサービス「SAP Concur」を導入しました。 2015年から在宅勤務制度を導入していた同社は、海外出張が多い社員向けに経費精算のデジタル化が急務でした。2025年5月より経費申請の「Concur Expense」、出張管理の「Concur Travel」、出張申請機能を持つ「Concur Request」の3機能を導入し、紙ベースの手続きを完全電子化。 同業他社での実績と24時間サポート体制がConcur採用の決め手となり、申請~精算の処理時間を60%短縮しました。特に海外為替レート自動計算機能により、経理部門の作業負荷を軽減しつつ、誤入力を98%削減しました。柔軟な働き方を支えるインフラ整備により、間接業務の効率化に直結した典型例です。 ※SAP Concurの詳細についてはこちら SAP Concurとは?概要・主要機能・導入メリットを徹底解説! 日立建機、海外拠点のERPを刷新 Dynamics 365によるグローバル経営統合 日立建機は、海外のグループ会社17拠点で運用してきた基幹業務システム(ERP)をマイクロソフト社の「Dynamics 365」へ刷新し、グローバルな経営基盤を強化しました。17カ国の拠点で異なるERPを運用していたためデータが散在しており、グループ全体の経営状況の迅速な把握やビジネス環境の変化への即応が困難な状況でした。 そこで、日立ソリューションズグループと共同で「グローバル標準テンプレート」を開発。これにより、海外各拠点の財務、販売、在庫といった多岐にわたる経営データが、日本本社からリアルタイムかつ一元的に把握できるようになり、経営の可視性が飛躍的に向上しました。また、Power BI連携により、在庫回転率の分析精度を40%向上させ、需要予測誤差を15%改善しました。 2026年までに北米拠点への展開を完了させる計画で、多国籍企業のシステム統合モデルケースとなっています。 原田伸銅所が「GROW with SAP」を採用、SAP S/4HANA Cloud Public Editionで経営基盤を刷新 SAP S/4HANA Cloudで実現するグローバル対応 りん青銅専業メーカーの原田伸銅所が、グローバル展開や経営判断の高度化を見据え、「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」を中核としたクラウドERP「GROW with SAP」を採用しました。海外売上比率30%から50%へ拡大を目指し、国産ERPからグローバル対応のクラウドERPへ移行。BTPを活用したSide-by-Side拡張により、現地税制対応機能を追加しながらシステムの「コアクリーン」を維持しました。 これにより、原価計算のリアルタイム化で、材料費変動への対応速度を2倍に向上しました。また、四半期ごとの自動アップデートにより、為替リスク管理機能を継続的に強化しています。特に東南アジア市場向けに、AIを活用した需要予測モジュールの追加が今後の重点課題です。 ※GROW with SAPの詳細についてはこちら GROW with SAPとは?概要・対象企業・導入メリットまで一挙紹介! 武州製薬、SAP S/4HANAを全工場に導入し、経営基盤を強化 SAP S/4HANAによる工場統合と品質管理革新 医薬品・治験薬の受託製造を手がける武州製薬株式会社は、ビジネスエンジニアリング株式会社の支援のもと、SAP S/4HANAを全3工場に導入しました。 3工場合併に伴い、「Fit to Standard」アプローチでマスタデータを統一。品目コードを5,000項目から1,200項目に集約し、ロット追跡精度を99.8%に改善。また、GMP対応の電子バッチ記録を導入することで、監査対応工数を月間200時間削減。特に治験薬製造では、温度管理データをS/4HANAと直結させ、規制当局への報告書自動作成機能を実現しました。 2025年までに欧州GMP認証取得を目指す中で、システムの国際対応力が競争優位性の源泉となっています。 ※「Fit to Standard」アプローチについてはこちら 「Fit&Gap」と「Fit to Standard」とは?特徴・要件定義・メリット比較を徹底解説![SAP導入方法論] まとめ:導入事例に学ぶ、ERP導入の成功要因 各社の成功要因は、ERP導入を「単なるシステム更新」ではなく「経営戦略の実行ツール」と位置付けた点にあります。 三菱自動車:働き方改革という人事戦略と経費精算プロセスのデジタル化を連動 日立建機:グローバル標準テンプレート開発に本社機能を集中投資し、データ分析力を武器に地域別戦略の最適化を推進 原田伸銅所:クラウドERPの継続的なアップデートがなされる利点を活かし、為替変動リスク管理など国際競争に不可欠な機能を段階的に強化 武州製薬:医薬品規制という業界特性を踏まえ、品質管理プロセスのデジタル化に優先投資 これらの事例から、ERP導入成功には、①「経営戦略との整合性」(全社共通)、②「業界特性に応じた機能優先度設定」(武州製薬のGMP対応)、③「グローバル展開を見据えた拡張性の確保」(原田伸銅所のBTP活用)が重要だといえます。特に注目すべきは、日立建機と武州製薬の事例にみられる「本社主導の標準化」と「現地固有要件への柔軟対応」の両立手法で、これは多拠点展開企業のベストプラクティスといえます。今後のERP導入では、AI/ML機能の活用(三菱自動車の経費精算AIチェックなど)と、ESGデータの統合管理が新たな課題となるでしょう。 📌 SAPコンサルタントの方へ 現在、SAP領域に特化した高単価・長期プロジェクト案件を中心に、非公開求人をご紹介しています。S/4HANA、BTP、Fit to Standardの経験を活かし、さらなるキャリアの選択肢を広げたい方は、ぜひご活用ください。 👉 詳細はこちら(60秒で登録無料)