SAP S/4HANA Cloud Public Editionは短期間、低コストで導入できるSaas型ERPシステムとして注目を集めています。この SAP S/4HANA Cloud Public Editionは独自の導入方法論である「Activate方法論」を用いて導入されています。本記事では、Activate方法論の概要や特徴、従来の方法論との違い、Activate方法論のメリットを解説します。 【SAP初学者向けアカデミー受講生募集】 「現役」SAPコンサルタントが提供する未経験からのSAPコンサルタント転職アカデミー 1.Activate方法論とは? ・概要 SAP Activate方法論は、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを効率的に導入するためのフレームワークです。SAP社がグローバルで培ってきたベストプラクティスや過去の導入方法論が集約され、導入プロジェクトの進め方やタスクが定義されています。 ・特徴 ① SAPベストプラクティスの活用 Activate方法論はSAPベストプラクティスを活用したシステム導入を実現します。SAPベストプラクティスとは、SAPシステムを導入する際の最適な業務プロセスや設定をまとめたテンプレートやガイドラインです。Activate方法論では、このベストプラクティスを活用することで最適なソリューションを迅速に導入することができます。 SAPベストプラクティスの詳細は以下の記事で解説しています。 SAPベストプラクティスとは?概要から具体例までを徹底解説! ② アジャイル思想 Activate方法論では、アジャイル開発の思想を取り入れたアプローチを採用しています。アジャイル開発とは、開発プロセスを「企画」「設計」「テスト」「リリース」といったサイクルに分け、スプリントと呼ばれる短期間の反復作業を繰り返す開発手法です。Activate方法論では要件の確認・設定・テストを繰り返しながらプロジェクトを進めます。これにより、短期間でのフィードバックと継続的な改善が可能となり、業務要件の変化にも柔軟に対応することができます。 ③Fit to Standardアプローチ Activate方法論では、Fit to Standardアプローチを採用しています。Fit to Standardとは、システムに業務を合わせるアプローチのことを指し、Fit to Standardワークショップを実施し、SAPベストプラクティスに基づくシステムの標準機能と既存の業務との適合性(Fit)を評価します。システムの標準機能と業務に差異がある場合、業務プロセスを最適化し、システムの機能と業務を対応させます。 Fit to Standardアプローチの詳細は以下の記事で解説しています。 SAP導入方法論「Fit&Gap」「Fit to Standard」 ・ Activate方法論の具体例 Activate方法論は導入するシステムの種類などによりいくつかの方法論に分かれます。以下は具体例の一部です。 ・SAP Activate Methodology for S/4HANA Cloud クラウド環境でSAP S/4HANA Cloudを迅速かつ効率的に導入するための方法論です。 ・SAP Activate Methodology for SuccessFactors 人事・人材管理ソフトウェアであるSAP SuccessFactorsを短期間で導入するための方法論です。 2. Activate方法論と従来の方法論の違い ・Activate方法論の流れ Activate方法論は以下のステップで進行します。①Discover(構想) 概要:プロジェクトの目的の確認、導入するソリューションがビジネスにどのような利益をもたらすのかを特定し、プロジェクトの方向性を決定します。 タスクの例・ビジネスケースの作成 ・初期的なプロジェクト計画の策定 ・ステークホルダーの特定 ②Prepare(準備) 概要:プロジェクトの正式な開始に向けて、詳細な計画と準備を行います。 タスクの例 ・プロジェクトチームの編成 ・プロジェクト計画の完成 ・システム環境のセットアップ ・キックオフミーティングの実施 ③Explore(探索) 概要:Fit-to-Standardワークショップを実施し、SAPの標準機能がビジネス要件を満たすかどうかを評価します。 SAPの標準機能とビジネス要件を比較し、業務プロセスの変更を検討します。ユーザーや関係者のフィードバックをもとに要件の調整を繰り返し、最適な業務プロセスを確定します。 タスクの例 ・標準機能と要件の適合性評価 ・デルタ(差異)の特定 ・設定値の検討と決定 ・特定された要件をバックログ*に追加 *アジャイル開発において管理される作業リストのことです。プロジェクトで必要な機能やタスクを優先順位をつけて整理し、開発チームが段階的に対応していきます。 ④Realize(実現) 概要:バックログに基づき、ビジネスプロセスとシステム環境を統合しながらシステムを構築します。徐々にシステムを構築し、同時にユーザーの教育も進めていきます。 タスクの例 ・顧客データのシステムへの読み込み ・システム設定の実施 ・テストの実施 ・トレーニング計画の作成 ・データ移行計画およびカットオーバー(新システムの始動)計画の準備 ⑤Deploy(展開) 概要:本番環境への移送を行い、システムを稼働させます。 タスクの例 ・最終的なデータ移行の実施 ・カットオーバーの実施 ・エンドユーザートレーニングの実施 ・組織の準備状況の確認 ・サポート体制の確立 ⑥Run(運用) 概要:システムの運用を最適化し、安定したパフォーマンスを維持します。継続的な改善を想定し、ユーザーのフィードバックをもとに設定の最適化を進めます。 タスクの例 ・システム監視とメンテナンスの実施 ・必要なパフォーマンスの維持 ・問題発生時の迅速な対応 ・運用効率を高めるための改善 ・従来の方法論の流れ 従来の方法論は以下のステップで進行します。①構想策定 プロジェクトの目的や範囲を明確にし、ビジネス要件を整理して全体計画を立てるフェーズです。 ②要件定義 システムに必要な機能やプロセスを詳細に定義し、設計や開発の土台となる要件を決めるフェーズです。 ③設計開発テスト 定義された要件に基づいてシステムを設計・開発し、その動作を確認するためのテストを実施するフェーズです。 ④移行 既存システムから新システムへのデータ移行やシステム環境の設定を行い、切り替えの準備を整えるフェーズです。 ⑤運用保守 本稼働したシステムを安定して運用し、必要に応じて修正や改善を行うフェーズです。 ・Activate方法論と従来の方法論の違い Activate方法論と従来の方法論の違いをまとめると以下のようになります。 ※1 インターネットを介して外部サービスを利用し、社内の業務システムやデータベースなどを運用するシステム環境 ※2 システムを運用するために必要なハードウェアやソフトウェアを自社で保有・管理する運用形態 3. Activate方法論を利用するメリット Activate方法論を利用するメリットには以下のようなものがあります。 ① 迅速な導入 Activate方法論はSAPベストプラクティスやFit to Standardアプローチの活用により、システムのカスタマイズの必要性が少ないです。また各フェーズでのタスクが明確なため、迅速にシステム導入をすることが可能です。 ② 最新技術への対応が容易 Activate方法論はクラウド向けに設計されたフレームワークです。そのため、最新技術やアップデートに迅速に対応可能です。 ③柔軟な開発が可能 Activate方法論ではアジャイル手法を取り入れた開発を行います。これにより、クライアントの要望の変化に柔軟に対応できます。 4.まとめ SAP Activate方法論は、クラウド時代におけるERPシステム導入の新たなスタンダードです。Activate方法論の概要や従来の方法論との違いを理解し、実際のプロジェクトに活かしましょう。 SAP導入に伴う、よくある落とし穴や効果的な導入については以下リンクを参照ください。真のデータドリブン経営を実現する SAP 導入支援5.告知 【SAP認定コンサルタント資格のメリット】・認定資格を未取得の人との市場での差別化を図れる ・認定資格を取得することによる自信とスキルを持ってタスクを実行できる ・価値の高い認定資格を持てば、高い賃金や料金を得ることができる 公式HP:https://sap-consultlabo.com/