SAP 認定資格とは、 SAP導入にかかわるコンサルタントを対象に SAP 社が実施している認定試験です。SAP導入プロジェクトやSAPの保守運用に携わる人材にとって、知識やスキルを証明する重要なツールとなります。SAP認定資格に合格するためには、基礎知識の習得だけでなく、問題演習を通して自分の実力を把握することが重要です。 本記事では、SAP認定資格の概要や勉強方法に加え、具体的な試験問題の解説を行います。 1.SAP認定資格とは SAP 認定資格とは、IT エンジニアや IT コンサルタントを対象に SAP 社が実施している認定試験です。SAP システムに関する知識と技術の習得を公式に認定する資格であり、SAPシステムの導入や SAP 関連プロジェクトに従事する場合、この資格の習得が推奨されています。SAP 認定資格では SAP S/4HANA、SAP FI/CO(財務会計・管理会計)、SAP MM(在庫管理)など 多くの試験が用意されており、現在141種類の資格があります。(2025 年 2 月時点)。 SAP認定資格の詳細は以下の記事で解説しています。 SAP 認定資格紹介〜認定資格にはどんな種類がある?一覧の確認方法、受験料や難易度は?〜 2.SAP認定資格の勉強方法 | 問題演習の重要性 SAP認定資格の勉強方法には、独学、専門の研修を受講する、実務の中で学ぶなど、さまざまな方法があります。その中でも、試験の過去問や模擬問題を解くことは、試験対策として特に効果的です。問題演習を通じて、自分の理解度を確認し、試験の出題傾向に慣れることができます。 ただし、まずは基礎知識を身につけることが重要です。基本的な概念や操作を理解し、試験問題の演習に取り組むことで、効率よく学習を進めることができます。 SAP認定資格は出題範囲が幅広いだけでなく、専門的な知識が問われます。独学での学習に不安を感じる場合は専門の研修を受講することも検討してみてください。 【SAP初学者向けアカデミー受講生募集】 「現役SAPコンサルタントが、SAP認定資格の取得から転職までを一貫してサポートするサービス」 3.試験問題の入手方法 SAP認定資格の試験問題の入手方法には以下のようなものがあります。 ・書籍:AmazonなどでSAP認定資格の演習問題が購入できます。 ・SAP公式HP:SAPの公式サイトでは認定資格のサンプル問題が入手できます。ここで試験範囲の確認もできるため受験前に必ず確認しましょう。 ・過去問のまとめサイト:「SAP認定資格 過去問」などのワードで検索すると一部のサイトでSAP認定資格の過去問が入手できます。 4.試験問題解説 近年、企業のデジタル変革やERP導入案件の増加に伴い、SAP S/4HANAの需要がますます高まっています。 特に、Fit to Standardを大方針とするPublic Cloud版の導入が業務変革を望むクライアントを中心に加速しており、今後さらに需要が伸びると予想されています。 そこで今回は、SAP S/4HANA Public CloudのFIモジュールに関する初心者向けのアソシエイト資格の試験問題を2つ紹介します。 試験名: SAP Certified Associate - Implementation Consultant - SAP S/4HANA Cloud Public Edition, Financial Accounting (C_S4CFI) 出題範囲 ①Introduction to Cloud Computing and SAP Cloud ERP Deployment Options (クラウドコンピューティングとSAPクラウドERPの導入オプションの概要) ②Outlining the Record-to-Report Process in SAP S/4HANA (SAP S/4HANAにおける記録から報告までのプロセス概要 )③Describing the Payables Management Process in SAP S/4HANA (SAP S/4HANAにおける買掛金管理プロセスの説明 )④Describing the Receivables Management Process in SAP S/4HANA (SAP S/4HANAにおける売掛金管理プロセスの説明 )⑤Designing Asset Accounting Process in SAP S/4HANA (SAP S/4HANAにおける固定資産会計プロセスの設計 )⑥System Landscapes and Identity Access Management (システムランドスケープとID・アクセス管理 )⑦Configuration and the SAP Fiori Launchpad (SAP Fioriランチパッドの設定と構成 )⑧Extensibility and Integration (拡張性とシステム統合 )⑨Data Migration and Business Process Testing (データ移行と業務プロセステスト )⑩Implementing with a Cloud Mindset, Building the Team, and Conducting Fit-to-Standard Workshops (クラウドマインドセットでの導入、チーム構築、およびFit-to-Standardワークショップの実施 )問題① 問題①は Outlining the Record-to-Report Process in SAP S/4HANA (SAP S/4HANAにおける記録から報告までのプロセス概要 )に関する問題です。 問題文Which function in SAP S/4HANA makes it possible to provide segmented financial reporting? A. Functional area B. Document splitting C. Ledger D. Currency conversion (日本語訳) SAP S/4HANAでは、セグメント別の財務報告を提供するために使用される機能はどれですか? A. 機能エリアB. 伝票分割 C. 元帳 D. 通貨換算 解答&解説 正解:B. 伝票分割(Document Splitting) SAP S/4HANAのドキュメントスプリッティングは、財務会計(FI)でセグメント別の財務報告を可能にするものであり、以下のような特徴を持ちます。 ・仕訳データを異なるセグメント(例えば、会社コードや事業部単位)へ自動的に分割できる。 ・IFRSやUS GAAPなど、セグメント別の財務報告が求められる会計基準に対応可能。 ・会社レベルでの報告だけでなく、事業部・セグメントごとの損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)を作成可能。 他の選択肢の解説A. 機能エリア(Functional Area) 機能エリアは、財務諸表でコストや収益を特定の機能(例:販売、製造、管理)ごとに分類するものです。 → セグメント別の財務報告には直接関与しないため、不正解。 C. 元帳(Ledger) 元帳は、異なる会計基準(IFRS・US GAAP・日本基準など)に対応するためのもの。 → セグメント別のレポートを作成する機能ではないため、不正解。 D. 通貨換算(Currency Conversion) 通貨換算は、異なる通貨での財務報告を行う際に適用する機能。 → セグメント別の財務報告には関係ないため、不正解。 問題② 以下の問題は Data Migration and Business Process Testing (データ移行と業務プロセステスト) に関する問題です。 問題文What are some reasons you cannot remove a test process automate from a test plan? Note: There are 2 correct answers to this question. A. The test process automate has not been made visible. B. The test plan has already been executed. C. The test plan user does not have the necessary permission. D. Data binding exists with another test process automate. (日本語訳) テストプランからテストプロセスオートメートを削除できない理由として考えられるものはどれですか?(2つ選択してください) A. テストプロセスオートメートが可視化されていない。 B. テストプランがすでに実行されている。 C. テストプランのユーザーに必要な権限がない。 D. 他のテストプロセスオートメートとデータバインディングが存在する。 解答&解説 正解:B. テストプランがすでに実行されている D. 他のテストプロセスオートメートとデータバインディングが存在する テストプロセスオートメートとは請求書の処理、支払処理の実行などの財務業務に関連する標準的なビジネスプロセスを自動でテストできる仕組みです。SAP S/4HANA Cloudのテスト管理において、テストプロセスオートメートを削除できない主な理由は、以下の2つです。 1. テストプランがすでに実行されている(B. The test plan has already been executed) 一度実行されたテストプランは、結果や履歴が記録されるため、テストプロセスを削除することができません。また、実行済みのテストは、変更履歴や監査のために保持される必要があります。2. 他のテストプロセスオートメートとデータバインディングが存在する(D. Data binding exists with another test process automate) データバインディング(Data Binding)とは、異なるテストプロセス間でデータの関連付けがあることを指す。他のテストプロセスと依存関係がある場合、そのプロセスが削除されると整合性が崩れるため、削除が制限されます。 他の選択肢の解説A. テストプロセスオートメートが可視化されていない(The test process automate has not been made visible) → テストプロセスの可視化は、削除の可否には直接影響しないため、不正解。 C. テストプランのユーザーに必要な権限がない(The test plan user does not have the necessary permission) → 権限がない場合は操作が制限されるが、管理者権限があれば削除できる可能性があるため、不正解。 5.まとめ 今回はSAP認定資格について、試験問題の解説を行いました。試験に合格するためには知識をインプットするだけではなく、問題演習などでアウトプットすることが重要です。定期的に問題演習を行い、自分の実力を把握しながら学習を進めることを心がけましょう。 6.告知 【SAP認定コンサルタント資格のメリット】 ・認定資格を未取得の人との市場での差別化を図れる ・認定資格を取得することによる自信とスキルを持ってタスクを実行できる ・価値の高い認定資格を持てば、高い賃金や料金を得ることができる 公式HP:SAP Consult Labo