SAP S/4 HANA Cloudでの調達プロセスは、購買依頼、供給元の選定、購買発注、入庫処理、請求書照合で構成されています。今回の記事ではこの中の入庫処理について、登録方法から伝票の項目までご紹介します。【SAP初学者向けアカデミー受講生募集】 「現役」SAPコンサルタントが提供する未経験からのSAPコンサルタント転職アカデミー 入庫処理とは入庫処理とは、発注した商品を自社の在庫として受け入れる処理です。 商品が仕入先から届くと検品し、指定の保管場所へ格納を行います。必要に応じて入庫時に品目の品質検査などを行うこともあります。SAPでの入庫処理では受領した数量や保管場所を指定して入庫の転記を行い、資産として計上します。 SAPにおける入庫転記処理とは 購買発注登録後、仕入先から品目が届いたら入庫転記処理を実施します。 アプリ:購買伝票の入庫転記から対象の購買発注伝票を入力すると、伝票に紐づく明細情報が表示されます。明細内で入庫した数量や格納した保管場所等を指定して“転記”を押下すると入出庫伝票が起票されます。 また、入庫処理時に対象の品目のステータスを“在庫タイプ”という項目で設定することができます。対象の品目が利用可能なのか、品質検査中なのか、何らかの理由で保留なのかを選択することができます。 入庫処理について、対象の品目が在庫管理対象の品目の場合は入庫転記が完了すると在庫数が増加します。 生成された入出庫伝票や仕訳の確認生成された入出庫伝票から、本処理で発生した仕訳を確認することも可能です。 【入出庫伝票画面】【仕訳照会画面】想定される業務運用入庫転記の画面で購買発注伝票を毎回検索し、転記処理を行うのはかなりの手間が生じてしまいます。ここでは実運用を考えた時に便利な機能をご紹介します。 アプリ:購買発注明細監視から項目“次の納入日程行日付”が今日になっているなどの条件で絞りこみ、対象の購買発注明細が表示されたら“購買伝票の入庫転記”を選択することで、伝票が指定された状態で入庫処理画面に遷移することができます。 入庫処理時の仕訳SAPでの特徴的な動きとして、入庫処理を行うと以下のような仕訳が自動的に発生します。 商品 1000 / 入庫請求仮勘定 1000 通常、簿記における取引では仕入を行った場合には以下のような仕訳で表現します。 商品 1000 / 買掛金 1000 SAPでは資産の増加(入庫転記)と債務の計上処理(請求書照合)が分かれて存在しています。 そのため、2段階で仕訳を処理するために入庫請求仮勘定という経過勘定を用いて入庫処理と債務の計上を繋いでいます。 入庫時:商品 1000 / 入庫請求仮勘定 1000 請求書照合時:入庫請求仮勘定 1000 / 買掛金1000 経過勘定は貸借で相殺しあうため、簿記における仕訳と同様の仕訳が残る形となります。 この経過勘定の考え方はSAP内の他のプロセスでも出てくるため、しっかりと覚えておきましょう。 入庫転記の項目 入庫転記においては納入済数量と保管場所、伝票日付、転記日付が必須項目となります。 必要に応じて納品書や船荷証券の番号を追加で登録することも可能です。 関連Scope ItemS/4HANA Cloud Public Editionにおける入庫処理については大きく2通りあり、入荷伝票を使用して入庫プロセスを詳細に管理するケースと、入荷伝票を使用せずに入庫処理のみを行うケースがあります。なお、Scope Item ID:2TX「入荷伝票を使用する直接調達」を有効にすると、購買発注ごとに入荷伝票の利用有無を指定できます。 Scope Item ID 機能名 概要 J45 直接材調達 在庫品目を調達する標準的なプロセス BNX 消耗品目購買 消耗品の調達を行うプロセス 2TX 入荷伝票を使用する直接調達入庫処理プロセスにおいて、入庫転記を行う前に入荷伝票を作成し、受入数の確認や予定納入日の管理などを行うことが可能 2LG サプライヤ受託品 仕入先に対して受託品の供給を依頼するプロセス まとめ今回はMMモジュール内の購買管理における入庫処理について、購買発注伝票を参照しての入庫転記の手順を記載しました。 入庫処理についてはプロセス、画面項目共にシンプルです。だからこそ裏で起きる会計仕訳も含め、しっかりと仕様を把握することが重要です。 告知 【SAP認定コンサルタント資格のメリット】・認定資格を未取得の人との市場での差別化を図れる ・認定資格を取得することによる自信とスキルを持ってタスクを実行できる ・価値の高い認定資格を持てば、高い賃金を得ることができる 公式HP:https://sap-consultlabo.com/