国内外でのクラウドERP活用が加速する中、ERP環境をより強化するための製品の発表が相次いでなされ、多くの導入事例が公表されています 。本記事では、6月に発表されたERP基盤+追加システム導入事例のうち、山善とイリソ電子工業の2社についてご紹介します。📌主要ERP製品 徹底比較ガイド|無料ダウンロードERP導入を検討中の方向けに、SAPやOracleをはじめとした主要クラウドERPの特徴・違い・選び方を1冊にまとめました。最新トレンドを踏まえ、機能比較/導入の注意点/SaaS型ERPの選定基準まで網羅しています。初期検討の情報収集や、社内検討資料の下地としてもご活用ください。👉 資料をダウンロードする(無料)株式会社山善、SAP SuccessFactors®に「テックタッチ」を導入生産財と消費財を幅広く取り扱う専門商社、株式会社山善は、人事システム「SAP SuccessFactors®」にテックタッチ株式会社のDAP「テックタッチ」を導入しました。テックタッチとは?テックタッチは、テックタッチ株式会社が提供する国内シェアNo.1のデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)です。DAPとは、企業や組織が導入したシステムやアプリケーションをユーザーが自律的に使いこなせるよう支援するツールで、主にWebシステムの画面上にリアルタイムで操作ガイドやナビゲーションを表示する機能を持っています。テックタッチの最大の特徴は、ノーコードで簡単にガイドや指示を設定できる点です。人事・総務担当者などシステムを専門としない非技術者でも 直感的なインターフェースを使って素早くガイドを作成でき、マニュアルを読む手間や教育コストを削減します。また、リアルタイムのデータ分析や柔軟なカスタマイズ機能により、ユーザーごとに最適化された体験を提供し、誤入力や誤操作を減らすことで業務効率化や生産性向上に貢献します。全社DAPツールをテックタッチに統一山善では、DX施策の推進力強化を目的としたデジタル融合戦略の一環として、2021年から基幹業務システム「SAP S/4HANA」にテックタッチを導入。その後、経費精算システム「楽楽精算」やBIツール、ローコード開発アプリなど複数の社内システムに展開してきました。一方、人事系システム「SAP SuccessFactors®」では、もともと他社DAPを利用していました。しかし、ガイド作成の難しさや非技術者には扱いづらいエディターといった操作性の問題、複数DAP運用によるライセンス費用の重複やガバナンスの課題といったコスト・管理面での問題が顕在化。そこで山善は、テックタッチの直感的な操作性、柔軟なカスタマイズ、サポート体制、コストパフォーマンスを評価し、全社のDAPをテックタッチに統一しました。ガイド運用の効率化と内製化を実現テックタッチの導入により「SAP SuccessFactors®」では、従来約180本あった操作ガイドを約50本まで集約し、保守性が向上。また、ノーコードでガイドを作成できるため、非技術者でも迅速にガイド更新が可能となり、ユーザー中心のガイド設計や満足度向上につながっています。今後も山善は、ビジネスアジリティ向上のため、テックタッチの活用範囲拡大を進めていく方針です。イリソ電子工業株式会社、Microsoft Dynamics 365への一斉移行を実現コネクタの開発や製造、販売事業をグローバルに展開するイリソ電子工業株式会社は、株式会社日立ソリューションズサポートの下、国内外14拠点のERPシステムを「Microsoft Dynamics 365 」へ刷新しました。グループ全体の業務統一とデータの可視化イリソ電子工業がこれまで利用してきたオンプレミスのERPは、グローバルなビジネス展開に即した管理会計や業務オペレーションの統一が不十分で、BCP※1やDR※2の懸念がありました。具体的には、災害時の全社的な被害状況把握や事業継続可能性の迅速な評価が困難となり、被災拠点の業務を他拠点で代替実行する際の障壁となる可能性がありました。加えて、国内外の5つの生産拠点と9つの販売拠点をつなぐ情報共有基盤がなく、経営データの可視化も困難でした。※1 BCP:Business continuity planの略。緊急事態が発生した際の、事業全体の復旧・継続のための計画※2 DR:Disaster Recoveryの略。緊急事態発生した際の、システム復旧のための計画新ERPの要件のひとつは、企業の成長に合わせて柔軟にリソースを拡張できるクラウド型であることでした。そこで、「Power BI」や「Microsoft 365」との親和性が高く、可用性も高い「Dynamics 365」の導入を決めました。導入時は、Fit to Standardの思想に基づき、新ERPの機能に合わせ業務オペレーションを統一し、カスタマイズは必要最低限に抑え、変化に追従できる基盤を構築。また、セルフサービスBIの導入で、社員自身がデータ分析を行える環境も整えました。▶︎「Dynamics 365」の詳細はこちら!ERPパッケージソリューションとは?SAP・Oracle・Microsoftの主要製品を徹底比較!成長機会を確実にとらえるためのDX方針イリソ電子工業は、特に車載分野において市場で高く評価されており、電動化や自動運転、SDV(Software Defined Vehicle)の普及を大きな成長機会と捉えています。また、売上が倍増しても人員を増やさずにオペレーションができるよう、経営体制の強化に取り組んでいます。今後も、CRMなど製造関係以外のシステムも含め、「Dynamics 365」を軸に各種システムを有機的に結合させることでDXを推進していきます。まとめ:山善・イリソ電子工業の事例の特徴山善とイリソ電子工業の事例はいずれも、「基本となるERPシステム」と「それを補完・強化するサポートシステム」の組み合わせによる導入・運用が特徴です。山善人事システム「SAP SuccessFactors®」(ERP領域)に対し、デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)「テックタッチ」を追加導入。これにより、非技術者でもノーコードで操作ガイドを作成できる環境を整え、ガイド作成・運用の効率化やユーザー満足度の向上を実現しました。イリソ電子工業グローバル全拠点の基幹業務を「Microsoft Dynamics 365」(ERP)に一斉移行し、さらに「Power BI」などのサポートシステムと連携。経営データの可視化や業務オペレーションの統一、セルフサービスBIによる現場のデータ活用力強化を実現しています。両社ともERP単体で全てを完結させるのではなく、ERPを基盤としつつ周辺システムを追加導入・連携することで、現場の業務効率化・運用性・データ活用力を高めている点が共通しています。ERP価値最大化のためのサポートシステム活用この2事例から導き出される示唆は「ERPの価値を最大化するためには、サポートシステムとの組み合わせによる全体最適化が重要」ということです。ERPは業務基盤として不可欠ですが、現場の多様なニーズや変化に柔軟に対応するには、操作性やデータ活用、ユーザーサポートなどの面で追加システムが不可欠です。ノーコードDAPやBIツールなどのサポートシステムを組み合わせることで、ERPの運用効率や現場の自律性、データドリブンな意思決定力が大きく向上します。結果として、IT人材不足や業務の複雑化といった現代的な課題にも、より現実的かつ迅速に対応できる体制が構築できます。今後も、「ERP+サポートシステム」の組み合わせによる全体最適化と現場主導のDX推進が、企業競争力の鍵となることが予想されます。