業務概要SDの出荷業務は、販売伝票に基づいて在庫を顧客へ配送するまでの一連のプロセスを管理します。これには、出荷伝票の登録、ピッキング、梱包、出庫確認、出荷証明が含まれます。出荷業務は、生産管理(PP)や在庫管理(MM)、財務会計(FI)モジュールとも密接に連携しています。SAPにおける出荷SAPにおける出荷とは、出荷伝票を登録し、実際に在庫を出庫後、出庫確認するまでの一連のプロセスを指します。出庫との違い出荷と混同されやすい用語として出庫が挙げられます。出荷がピッキングから出庫確認までの在庫移動プロセス全体を指すのに対して、出庫は実際に倉庫から在庫を取り出し、得意先へ送り出すまでのプロセスを指します。つまり、出荷プロセスの一部として出庫プロセスが存在します。出荷を行わない業務在庫の移動を伴わないサービス(医療、コンサルティング等)は出荷業務を行わないため、受注後に請求処理に遷移します。出荷伝票とは出荷伝票とは、確定した販売伝票に基づいて、商品の出荷を倉庫や出荷担当部門に指示し、ピッキングから出庫確認までの一連の出荷業務全体を管理する伝票のことです。例外として、プロモーションに用いるために販促品を在庫から払い出す場合など、売上は立たないが在庫を減少させる活動を記録する目的で受注参照なしで登録されることがあります。入出庫伝票との違い入出庫伝票とは、出庫確認後に自動作成される伝票で、「どの保管場所のどの在庫がいつ、出庫によって減少したか」が記録されています。この伝票は入庫の管理もしている為、在庫の増減を管理している伝票ということができます。つまり、出庫確認までの情報を保持するのが出荷伝票、出庫の実績を保持するのが入出庫伝票ということができます。出荷伝票の主な役割1. 出荷活動の起点出荷伝票が作成されることで、ピッキング、梱包、輸送計画などの物理的な出荷準備が開始されます。2. 情報の集約出荷先、品目、数量、納入期日など参照元の伝票から引き継いだ情報に加えて、ロット情報や輸送手段等が記載されている為、出荷業務で必要な情報を一元管理できます。出荷伝票照会→明細詳細→ピッキング3. 進捗確認出荷伝票はピッキングや梱包、請求などの進捗をステータスとして管理することができます。ステータスは一部例外を除きA(未処理)、B(一部処理済)、C(処理完了)、空欄 にて判断できます(例えば梱包は進捗度合+分散倉庫システム管理か否かが表示されます)。空欄は処理を行う段階ではないことを表します。出荷伝票照会→ステータス概要4. 出荷証明顧客からの受取連絡を出荷伝票に反映させることで、着荷基準や検品基準のトリガーとなります。5. 後続伝票への情報共有請求伝票や会計伝票、入出庫伝票は出荷伝票が参照元となって作成されます。請求伝票照会→伝票フロー入出庫伝票概要業務の詳細手順SAPにおける出荷業務の主要な手順は以下の通りです。1. 出荷伝票の登録確定した受注伝票を基に出荷伝票を登録します。出荷伝票登録 – 受注から2. ピッキング出荷伝票管理 – VL06Oを開き、ピッキング目的を選択します。該当の出荷伝票を検索するため、出荷ポイント、ピッキングデータを入力します。出荷伝票管理 – VL06Oピッキングタイプは2種類あり、WM(倉庫管理モジュール)を使用するピッキングと使用しない通常のピッキングに分かれます。WMは在庫管理の際に棚番単位で細かく管理する際に使用します。今回はWMを使用していない想定で、ピッキングのみを選択します。該当の伝票を選択し、出荷伝票変更を選択します。ピッキング数量欄に未処理数量と同数を入力し、保存を選択します。出荷伝票の変更が保存されました。出荷伝票変更を開き、ヘッダセクションで梱包を選びます。3. 梱包(必要に応じて)出荷伝票変更4. 出庫確認出荷伝票管理 – VL06Oを開き、出庫目的を選択します。該当の出荷伝票を検索するため、出荷ポイントを入力します。出荷伝票管理 – VL06O該当の出荷伝票を選択し、出庫確認を選択します。ダイアログボックスは本日の日付を入力します。]5. 出荷証明(必要に応じて)概要:売上基準に着荷基準、検収基準を採用している企業が行います。顧客からの受領連絡を受けて出荷証明を登録します。関連するScope ItemBD9在庫販売在庫販売の受注から請求までの プロセス3BS倉庫出荷処理運送業者の割当やピッキング、 荷役単位を登録するプロセス1P9会社間在庫転送会社間での在庫の受渡のプロセスBDD簡易返品顧客からの返品を受け入れる プロセス1IU得意先受託品/預託品預託品の引渡から出庫、返品までのプロセス31Q販売キットの受注処理バンドル販売の受注から請求までのプロセスBME出荷伝票を使用した在庫転送同じ会社コード内での在庫転送プロセスBMY外注外注購買依頼から請求までのプロセス3NR販売分納契約長期の販売契約締結から請求までのプロセス4MM荷役単位管理荷役単位の作成から梱包までのプロセス実際にSAPを操作する上で理解しておくべきポイントSAP SDの出荷業務において、操作上、理解しておくべきポイントをまとめました。伝票同士のつながりを把握する:出荷伝票がどの伝票を参照して作成され、どの伝票の参照元になるか把握している必要があります。例えば、出荷伝票を何も参照せずに作成すべきケースは、無償販売や販促品の出荷など特殊な要件に限られる為、通常業務の場合はまずどの伝票を参照して作成するべきかを考える必要があります。企業ごとの入力すべき情報を把握する:例えば輸出する場合、出荷伝票にはインボイスの情報を連携する必要があります。項目によってはシステム上入力せずに次のステップに進むことができますが、法的な要件、特殊な品目の輸送方法が記載されていないなど実務に支障が出ることがあります。このような問題を避けるためには、要件定義、項目定義を適切に行い、完全に把握していることが大切です。出庫確認、出荷証明などの意味合いを正しく理解する:SAPを操作する上で用語の確認は必須となりますが、前述のとおり、本モジュールでは字面が似ている用語が散見されます。英語の記事を参照する、項目のヘルプを参照するなど正確な用語の理解に時間をかける必要があります。矛盾のない事前設定を行う:出荷ポイント、梱包材の設定など各マスタの設定を正確に行い、正しい組み合わせで伝票を作成しない場合エラーが発生します。設定する項目が多く、関係するマスタも多岐に渡るため、エラー発生時の原因究明が難しくなりがちです。例えば、品目マスタにシリアルナンバーを設定している場合、どのシリアルナンバーの在庫を出庫するか選択する工程と、該当する在庫の品質検査が必要になります。 まとめ今回はSDモジュールの出荷手順について解説しました。出荷手順はSDモジュールの中心的な業務であるため、最終的には何も資料を見ずに行うことを目標にしましょう。繰り返しになりますが、参照元となる伝票は何か、どの項目を入力すべきか明確にすることが重要です。