SAPは導入するサーバーの運用形態によって、導入方法論が定められています。今回の記事では、SAPのサーバー運用形態と、それぞれに対応した導入方法論を具体的に解説します。Fit&Gap と Fit to Standard について、それぞれの進め方や、違いについて焦点を当てて見ていきましょう。 【SAPコンサルタント募集】 年収800万~2500万 平均残業時間 4.1h/月カジュアル面談の応募を是非お待ちしています!SAPのサーバー運用形態の種類 SAPのサーバー運用形態は、大きくオンプレミスとクラウドの2つに分けられます。それぞれの特徴を確認しましょう。オンプレミス版のSAP オンプレミスとは、自社内にサーバを置き、自社で管理・運用する方式です。主なメリットは高度なカスタムとセキュリティが可能という2点です。SAP導入企業がインフラを所有するため高度なカスタマイズが可能です。そのため、特定のニーズに合わせた調整が容易です。また、データの保管場所やアクセスに対して完全な制御が可能なため、高いレベルのセキュリティとコンプライアンスを実現できます。一方でデメリットとしては高いコストが挙げられます。SAP導入企業自身でハードウェアの購入、設定、保守、アップグレードが必要であり、コストやリソースが多く必要です。従来製品である、S/4 HANAにはオンプレミス版が存在しており、導入されることも多々ありました。クラウド版のSAPクラウド上にサーバを置き、管理・運用まで実施する方式を指します。自社専用のプライベートクラウドと、複数社で共有のパブリッククラウドとの2つに分けられます。 RISE with SAP はクラウド版で提供されています。プライベートクラウドでは、クラウド環境を単一の組織が専用に利用できるため、パブリッククラウドと比較すると高度なカスタマイズが可能で、特定のセキュリティ要件やコンプライアンスに対応しやすいという、オンプレミスに近いメリットがあります。オンプレミスと比較すると、リソースの拡張・縮小が容易であるため需要の変動に対応可能であることや、最新のシステム利用を迅速に利用できることなどがメリットです。一方で、専用のサーバー、ストレージ、ネットワークを利用するため、パブリッククラウドに比べてコストが高くなるというデメリットも存在します。 パブリッククラウドのメリットは、クラウドプロバイダーがインフラを所有し・運用するため、自社でのハードウェアやソフトウェアのメンテナンスが不要である点が挙げられます。また、利用量に応じた料金体系でスケーリングに伴うコストを管理しやすいことも魅力的です。導入にかかるコストも、独自の開発やリソースがほぼ不要であるため、小さくなります。しかし、オンプレミスやプライベートクラウドと比較するとカスタマイズの自由度がないというデメリットも存在します。 まとめると、両者はどこにサーバを置き運用をするかが異なり、カスタムの自由度や導入コストに大きな違いがあります。SAPの導入方法論は、運用形態ごとにSAP社により定義されています。ソリューションごとに適用する運用形態はあらかた決まっているため、結果的にソリューションごとに導入方法が異なることが多いです。SAP社が定義する主な導入方法論クラウドが自社専用である場合、すなわちオンプレミスもしくはプライベートクラウドで運用する場合、導入方法論は Fit&Gap が採択されます。Fit&Gap は、業務内容に合わせてシステムの仕様を変更する手法です。一方で、クラウドを他社と共有する場合、すなわちパブリッククラウドで運用する場合、導入方法論は Fit to Standard が採択されます。 Fit to Standard は、業務内容をERPの標準機能に合う形で変更していく手法です。 Fit&GapFit&GapとはFit&Gap は、 ERPを導入する際に業務内容に合わせてシステムをカスタムするやり方です。導入期間は長期が多く、1年を超えるケースもあります。現場優先のボトムアップ型でプロジェクトが推進されることも特徴です。カスタマイズの自由度が高いため、企業に合ったERPにできるというメリットの反面、難易度の高い導入である上に期間が長期間にわたることでコストが増大しがちというデメリットがあります。Fit&Gapにおける要件定義カスタマイズやアドオン開発を視野に入れて要件定義を実施する必要があります。標準機能で実現できる業務と実現できない業務を切り分けて、後者についてカスタマイズやアドオンで実装するのか、業務を変えざるを得ないのか判断をします。Fit&Gap では、 まずSAPの機能と企業のAs-Is業務がどれだけマッチしているかを分析します。現行業務のうち、SAPの標準機能で対応可能な場合は「Fit」に、標準機能では対応できない場合は「Gap」として分類します。「Gap」として特定された要件については、以下の3つのアプローチから対応方法を検討します。 ①カスタマイズSAPシステムの標準機能を利用して、企業の業務プロセスに合わせて設定を調整します。具体的な手法の例として以下があります。組織構造の定義、会計年度の設定、品目マスターの属性設定など、SAPの標準機能内で提供されている設定オプションを使用して、システムの動作を調整標準プログラムに影響を与えずに、特定のビジネスプロセスにカスタムロジックを追加②アドオン開発標準機能では対応できない特定の業務要件や独自のビジネスプロセスを実現するために、新しい機能やモジュールを開発します。具体的な手法の例として以下があります。SAPの専用プログラミング言語であるABAPを使用して、新しいレポート、トランザクション、ユーザインターフェース、バッチプログラムなどを作成SAPの標準モジュールに追加する形で、完全に新しい機能を持つ独自モジュールを開発③プロセス変更企業の業務プロセスを変更し、標準機能に適合させます。※アドオン開発と標準機能:標準機能は、SAPシステムにあらかじめ組み込まれている機能やモジュールです。多くの企業の一般的なビジネスプロセスをサポートできますが、中には標準機能だけでは対応できない特定の要件も存在します。そこで、新しい機能やモジュールを追加するプロセスである、アドオン開発を実施します。標準機能が基盤となり、アドオン開発が特定のビジネス要件に応じてその機能を補完し、拡張します。これにより、企業はより効率的で競争力のあるシステムを構築することができます。 Fit to StandardFit to StandardとはFit to Standard は、SAPを導入する際にアドオン開発をできるだけ行わずに、業務内容をSAPの標準機能に合わせていくやり方です。数ヶ月の短期間で導入可能であり、経営主導によりトップダウン型でプロジェクトが推進されます。業務プロセスの変更を前提としており、標準機能を最大限に活用してカスタマイズや追加開発を最小限に抑えることを目指します。 SAP社の知見を活かして最適化された業務を実現するシステムがSAP標準機能であるため、標準機能を最大限活用する形での業務変更は業務効率化にもつながります。追加開発がない分コストは抑えられるメリットがある一方で、柔軟性がなく、現場に受け入れられにくいといったデメリットがあります。Fit to Standardにおける要件定義Fit to Standard では、現行の業務プロセスをSAP標準機能にマッピングし、ギャップを分析します。分析結果をもとに、業務プロセスの変更を計画・実行することで、標準機能に適合させます。業務プロセス変更にあたっては、組織全体で新しいプロセスを受け入れるためのトレーニングを実施します。また、導入後もベストプラクティスに基づいた業務プロセスの改善が必要になります。 ※ベストプラクティス: 既に実績のある最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動などのことを指します。ベストプラクティスは、SAP社が全世界の顧客とのやり取りを通じて蓄積した知見をもとに作成しています。 最近のトレンド 近年は、運用時のメリットが大きいことからクラウド(特にパブリッククラウド)版のSAP導入が増えています。そのため、パブリッククラウドの導入手法である、 Fit to StandardでのSAP導入が増えています。 パブリッククラウド運用時のメリットは、①自社業務の効率化②バージョンアップ対応の容易さ③グローバル経営の促進の3つが挙げられます。 ①自社業務の効率化 ベンダー企業が提供しているSAPシステムの標準機能は、本来その業界のベストプラクティスを標準化したものです。 そのため、標準機能を最大限に活かし業務を適合させていくことで、従来のシステムでは成しえなかった業務効率化が実現する可能性があります。導入直後は、既存業務と比較してシステムに不足を感じることもあるかと思いますが、長期的には Fit to Standard により既存業務をシステムに合わせて変えるメリットの方が大きいといえます。 ②バージョンアップ対応の容易さ Fit to Standard では、クラウドベンダーが提供する最新バージョンのシステムをそのまま使うことができます。すなわち、最新機能を迅速に取り入れて自社の業務を最新のICT環境に適合させることができます。クラウド版のSAP S/4HANAは、四半期ごとにアップデートされることを考えると、最新バージョンを大きな手間なく使用できることは非常に重要だといえます。 一方、 Fit&Gap ではバージョンアップのたびに追加したアドオン間での調整が必要になります。アドオンした機能との互換性がなく最新の機能が使えないことで、柔軟性に欠けるレガシーシステムが出来上がってしまう問題が生じます。これは、本来、データ利活用の基盤となるべき基幹系システムが、肥大化、ブラックボックス化してしまう可能性につながります。 ③グローバル経営の促進 世界的なクラウドベンダーが提供するSAPは、国境を超えてその業界で要求される標準的な機能を搭載しています。そのため、Fit to Standard の推進は自社の業務形態を業界標準に近づけることであり、グローバル経営を促進することにつながります。 一方、 Fit&Gap では独自の商習慣を反映させていることから、事業をグローバルに展開しようとしたときにかえって足枷となってしまうケースも少なくありません。 まとめ SAPのサーバー運用形態は、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドの3つ。 オンプレミス、プライベートクラウドの導入方法論は、企業の独自要件を満たすことに重点を置いた Fit&Gap 。 パブリッククラウドの導入方法論は、 標準機能に業務プロセスを合わせることに重点を置いた Fit to Standard 。 近年は運用時のメリットの大きさから、 Fit to Standard が注目を集めている。 告知【SAPコンサルタント募集】 年収800万~2500万 平均残業時間 4.1h/月カジュアル面談の応募を是非お待ちしています!株式会社Anfiniでは現在SAPコンサルタントを募集しています。経験を問わず、会社の概要や入社後のキャリアイメージなど、ご興味がある方は是非カジュアル面談にご応募ください!(選考に一切関係なし)■株式会社 Anfiniって?ベストベンチャー100に創業3期目で選出!従業員ファースト「業務時間8⇒6を目指す」独立系ブティックファーム「経営管理クラウドXO」を融合した経営コンサルティングを提供詳細は以下の記事をご覧ください。カジュアル面談可【急募】SAPコンサルタント/リモート可/副業自由/平均残業4.1