設計フェーズでは、システムとして要件をどのように実装するかを決定します。今回の記事では、SAP導入プロジェクトにおいて重要な工程である設計フェーズの流れや具体的な実施内容・成果物を解説します。 【SAPコンサルタント募集】 年収800万~2500万 平均残業時間 4.1h/月カジュアル面談の応募を是非お待ちしています!設計フェーズの位置づけ SAPの導入プロジェクトは、V字モデルで進みます。V字モデルとは、SAP導入の流れにおける後半のテスト工程が、前半の開発工程に対応しているモデルを指します。V字左側上部の「構想策定フェーズ」から下のほうへと順に開発工程が進み、「設計フェーズ」まで完了します。その後、「実現フェーズ」をスタート地点としてテスト工程が進み、V字の右側上部の「稼働後支援フェーズ」へと移っていきます。 設計フェーズは、要件定義フェーズで抽出された要件をシステムとして具体化します。あるべき業務プロセスを実現できるシステムを構築するためには、ほぼ確実に標準機能だけでは対応できません。標準機能で実現できない業務プロセスは、標準機能のカスタマイズもしくはアドオン開発で対応する必要があります。どちらで対応するかによって、設計フェーズの流れや成果物が異なります。 ※カスタマイズとアドオン開発の違い カスタマイズとは、SAPシステムの標準機能を利用して、企業の業務プロセスに合わせて設定を調整することを指しています。一方アドオン開発とは、標準機能では対応できない特定の業務要件や独自のビジネスプロセスを実現するために、新しい機能やモジュールを開発することをいいます。 設計フェーズの流れ カスタマイズの場合 カスタマイズの場合、設計フェーズは①カスタマイズ一覧作成②スケジュール作成③カスタマイズ図書作成の順で実施します。 ①カスタマイズ一覧作成カスタマイズ1つ1つの内容や対応する業務に関する情報がまとまった、カスタマイズ一覧を作成します。業務領域、プロセスID、カテゴリー、サブカテゴリーはすでに要件一覧として整理されているものを抽出します。一方で、カスタマイズ概要とカスタマイズ詳細はこの段階で初めて明文化します。このとき、基本的には要件と1対1対応でカスタマイズを一覧にしますが、一部で1つの要件に対して複数の箇所にカスタマイズが必要な場合があります。そのため、カスタマイズ図書作成時にカスタマイズ箇所の抜け漏れを防ぐため、カスタマイズする箇所を網羅的に記述する必要があります。 ②スケジュール作成 各カスタマイズに対する作業スケジュールを決定し、①で作成したカスタマイズ一覧上に日付を追加します。この時に、文書の作成完了日に加えて、レビュー完了日も決める必要があります。カスタマイズ設計図書が完成した後には、必ずレビューが必要になるからです。 ③カスタマイズ図書作成カスタマイズ設計では、要件を実現するためにシステムをどのように変更するかを文書にまとめます。この時に作成される文書は「カスタマイズ設計図書(CS:Configuration Specification)」と呼ばれます。カスタマイズ設計図書には、要件を満たすための具体的なカスタマイズ内容や、カスタマイズ完了後に実施するテストの詳細も含まれます。アドオン開発の場合 アドオン開発の場合、設計フェーズは①スケジュール作成②機能設計③詳細設計の順で実施します。 ①開発スケジュール作成 要件定義フェーズで作成されたWRICEFリスト*のオブジェクトごとに対応スケジュールを決定して、日付を追加します。この時に、他機能や検討事項との関連性を考慮することが必要です。例えば、とあるプログラムが別のプログラムによって処理された情報を用いる場合、前工程のプログラムの仕様を決めてから、後続のプログラムの仕様を設計したほうが、手戻りが少なくなります。 ※ WRICEFリストとはWRICEFリストとは、開発するオブジェクトを分類分けしてリスト化したものです。標準機能で対応できない機能について、どのような開発が必要になるのかが記述されています。 ②機能設計 機能設計では、要件をどのようにシステム実装するかを文書にまとめます。この時に作成される文書は「機能設計図書(ES:Functional Specification)」と呼ばれます。機能設計図書には、システムの動作概要や目的、関係する要件概要、カスタマイズ一覧、プログラムの処理手順、テストケースなどが含まれます。カスタマイズとは異なりゼロからシステムを構築するため、プログラムの処理手順が記載されていることがポイントです。この文書を基に、システムの全体像や各機能の詳細が理解できるようになります。 ③詳細設計詳細設計では、機能設計図書に基づき、プログラムとしてどのように実装するかを文書にまとめます。詳細設計は、どういったモジュールを使うか、メソッドを使うかなど、プログラム寄りの設計になります。そのため、設計メンバー(要件定義メンバー)から開発メンバーに基本設計の説明をした後に、開発メンバーによって詳細設計が行われます。 この時に作成される文書は「詳細設計図書(TS:Technical Specification)」と呼ばれます。詳細設計図書には、機能設計図書を基にしたプログラムの具体的な実装方法や技術的な詳細が記述されます。これにより、開発者は実際のプログラムを構築する際に必要な情報を得ることができます。また、開発者との認識合わせの内容や、開発作業の手順、テスト計画も詳細設計図書に含まれます。 設計フェーズの成果物 カスタマイズの場合カスタマイズの設計フェーズでは、カスタマイズ設計図書が成果物となります。カスタマイズ設計図書カスタマイズ設計図書は企業やプロジェクトごとによってテンプレートが異なりますが、一般的には4つの内容が含まれます。 ➀カスタマイズの概要と目的 文書内に記載されているカスタマイズの概要と目的を記載します。これにより、後からプロジェクトに参加するメンバーが特定のカスタマイズの内容を理解しやすくなります。②関連する要件概要 カスタマイズに関連する要件の要件番号や具体的内容について、要件定義フェーズでまとめた要件一覧から抜粋して記載します。これにより、要件とカスタマイズの対応関係を明確にします。 ③カスタマイズ詳細とノード情報 実際に行うカスタマイズの詳細や、カスタマイズを行うノード情報*が記載されます。これは表形式などで整理し、必要に応じて補足情報を加えます。 ※ノード情報とは ノード情報は、カスタマイズを実施する対象の階層名を指します。ノードとは、業務領域別にカスタマイズを実施できる対象を指します。カスタマイズノードはツリー形式でどんどんドリルダウンしていくことができます。具体的には、以下のようになります。Path: Financial Accounting Global Settings(New) > Ledgers > Fields > Customer Fields > Define Field Status Variants ④テストケース カスタマイズが完了した後に実施するテストの詳細を記載します。以下のように、カスタマイズにより実現したい動作の分岐や条件について具体的に記述します。 新規作成した伝票タイプが発注伝票の新規作成画面上で確認でき、発注伝票の保存が出来る 新規作成した伝票タイプを使用した発注伝票を変更モードにし、保存できる 新規作成した伝票タイプを使用した発注伝票を照会モードで照会出来る テストケースのパターンについては、抜け漏れに注意しながらも、最低限の工数になるように整理することが大切です。 アドオン開発の場合アドオン開発の設計フェーズでは、機能設計図書と詳細設計図書が成果物になります。機能設計図書 機能設計図書の内容は、WRICEFタイプによって多少異なります。ここでは共通する内容について説明します。 ➀機能設計図書の概要、目的 文書内に記載されているカスタマイズの概要と目的を記載します。これにより、後からプロジェクトに参加するメンバーが特定のカスタマイズの内容を理解しやすくなります。 ②関係する要件概要 カスタマイズに関連する要件の要件番号や具体的内容について、要件定義フェーズでまとめた要件一覧から抜粋して記載します。これにより、要件と開発の対応関係を明確にします。 ③関係するカスタマイズ一覧 特定のカスタマイズに関連する場合は、開発する機能を動かすために必要なカスタマイズを記載します。カスタマイズとは全く無関係な開発の場合は、ブランクになります。 ④前提条件開発プログラムが動く際の前提条件を記載します。例えば、別のプログラムが出力したファイルを処理するというプログラムを作る場合は、そもそも別のプログラムがファイル出力をきちんと行ってくれることが前提になる、といったことを記述します。 ⑤プログラムの処理、順番 プログラムを実行するときの条件や、実行の手順などを記載します。また、うまく動かなかったときの異常終了の方法や、エラーをどのように管理するのか、といった内容も記述が必要になります。 ⑥テストケース 開発が完了した後に実施するテストの詳細を記載します。動作の条件や分岐を具体的に表現します。プログラムの処理として複数の分岐がある場合は、それらの分岐をすべて網羅的にテストできるように複数のテストケースを作る必要があります。 詳細設計図書 詳細設計図書は、開発者がシステムを実行するための具体的な指針となる内容が記載されます。具体的には、プログラムの構造、データのフロー、画面レイアウト、入力チェック、エラー処理、データベーステーブル構造といった内容が含まれます。 まとめ ・カスタマイズの場合、設計フェーズの成果物はカスタマイズ設計図書。 ・アドオン開発の場合、設計フェーズの成果物は機能設計図書、詳細設計図書。 告知【SAPコンサルタント募集】 年収800万~2500万 平均残業時間 4.1h/月カジュアル面談の応募を是非お待ちしています!株式会社Anfiniでは現在SAPコンサルタントを募集しています。経験を問わず、会社の概要や入社後のキャリアイメージなど、ご興味がある方は是非カジュアル面談にご応募ください!(選考に一切関係なし)■株式会社 Anfiniって?ベストベンチャー100に創業3期目で選出!従業員ファースト「業務時間8⇒6を目指す」独立系ブティックファーム「経営管理クラウドXO」を融合した経営コンサルティングを提供詳細は以下の記事をご覧ください。カジュアル面談可【急募】SAPコンサルタント/リモート可/副業自由/平均残業4.1