SAPの導入方法は、SAPのサーバーの運用形態によって大きく異なります。 *SAPの運用形態にはオンプレミスとクラウドの2種類があります。 クラウドはさらにプライベートクラウドとパブリッククラウドに分けることができます。今回の記事ではオンプレミスとプライベートクラウドで採択される Fit&Gapと、パブリッククラウドで採択される Fit to Standardについてそれぞれ解説します。SAP導入プロジェクトに関わるコンサルタントにとっては必須の知識なのでしっかり理解しましょう。【SAP初学者向けアカデミー受講生募集】 「現役」SAPコンサルタントが提供する未経験からのSAPコンサルタント転職アカデミー Fit&GapFit&Gapとは現行業務のうち、SAPの標準機能で対応可能な場合は「Fit」に、標準機能では対応できない場合は「Gap」に分類します。Fit&Gap は、 現行業務を実現できるようにSAPを導入する方法です。標準機能で対応できない部分はカスタマイズ、アドオン開発で対応します。ただし、やむを得ず現行業務を変更する場合も現場では多々あります。自社専用のクラウドで運用する場合(オンプレミス or プライベートクラウド)の導入方法論としてSAP社に定義されています。Fit&Gap の特徴導入期間:長期(1年を超えるケースあり)コスト:大きい傾向にある難易度:高いその他:現場優先のボトムアップ型でプロジェクトが推進されるメリット:自由度が高いため、現行業務を変更せずにERPを利用できるデメリット:難易度が高く、期間が長期間にわたることでコストが増大しやすいFit&Gapにおける要件定義標準機能で実現できる業務(Fit)と実現できない業務(Gap)を切り分け、Gapについて対応を検討します。Fit&Gap では、最初にGapを洗い出します。そのためにSAPの機能と企業のAs-Is業務がどれだけマッチしているかを分析する必要があります。「Gap」として特定された部分は、以下の3つのアプローチを検討します。①カスタマイズSAPシステムの標準機能を利用して、企業の業務プロセスに合わせて設定を調整します。具体的な手法の例として以下があります。・組織構造の定義、会計年度の設定、品目マスターの属性設定などSAPの標準機能内で提供されている設定オプションによりシステムの動作を調整・標準プログラムに影響を与えずに、特定のビジネスプロセスにカスタムロジックを追加②アドオン開発標準機能では対応できない特定の業務要件や独自のビジネスプロセスを実現するために、新しい機能やモジュールを開発します。具体的な手法の例として以下があります。・SAPの専用プログラミング言語であるABAPを使用して、新しいレポート、トランザクション、ユーザインターフェース、バッチプログラムなどを作成・SAPの標準モジュールに追加する形で、完全に新しい機能を持つ独自モジュールを開発③業務プロセス変更企業の業務プロセスを変更し、標準機能に適合させます。※アドオン開発と標準機能:標準機能は、SAPシステムにあらかじめ組み込まれている機能やモジュールです。多くの企業の一般的なビジネスプロセスをサポートできますが、中には標準機能だけでは対応できない特定の要件も存在します。そこで、新しい機能やモジュールを追加するプロセスである、アドオン開発を実施します。標準機能が基盤となり、アドオン開発が特定のビジネス要件に応じてその機能を補完し、拡張します。これにより、企業はより効率的で競争力のあるシステムを構築することができます。 Fit to StandardFit to StandardとはFit to Standard は、業務内容をSAPの標準機能に合わせていくやり方です。カスタマイズやアドオン開発を基本的には実施しません。ただし、こちらもFit&Gap同様、やむを得ずアドオン開発等が生じる場合はあります。他社と共有のクラウド上で運用する場合(パブリッククラウド)の導入方法論としてSAP社に定義されています。数ヶ月の短期間で導入可能であり、経営主導によりトップダウン型でプロジェクトが推進されます。業務プロセスの変更を前提としており、標準機能を最大限に活用してカスタマイズや追加開発を最小限に抑えることを目指します。 SAP社の知見を活かして最適化された業務を実現するシステムがSAP標準機能であるため、標準機能を最大限活用する形での業務変更は業務効率化にもつながります。Fit to Standard の特徴導入期間:数か月コスト:比較的少ない難易度:比較的容易その他:経営主導によりトップダウン型でプロジェクトが推進される SAP社の知見によって最適化された標準機能の活用により、業務効率化につながる メリット:追加開発がない分コストは抑えられ、業務効率化にもつながるデメリット:柔軟性がなく、現場に受け入れられにくいFit to Standardにおける要件定義Fit to Standard では、現行の業務プロセスをSAP標準機能にマッピングし、ギャップを分析します。分析結果をもとに、業務プロセスの変更を計画・実行することで、標準機能に適合させます。業務プロセス変更にあたっては、組織全体で新しいプロセスを受け入れるためのトレーニングを実施します。また、導入後もベストプラクティスに基づいた業務プロセスの改善が必要になります。 ※ベストプラクティス: 既に実績のある最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動などのことを指します。ベストプラクティスは、SAP社が全世界の顧客とのやり取りを通じて蓄積した知見をもとに作成しています。最近のトレンド近年は、運用時のメリットが大きいことからクラウド(特にパブリッククラウド)版のSAP導入が増えています。そのため、パブリッククラウドの導入手法である、 Fit to StandardでのSAP導入が増えています。パブリッククラウド運用時のメリットは、以下の3つが挙げられます。①自社業務の効率化②バージョンアップ対応の容易さ③グローバル経営の促進①自社業務の効率化ベンダー企業が提供しているSAPシステムの標準機能は、本来その業界のベストプラクティスを標準化したものです。 そのため、標準機能を最大限に活かし業務を適合させていくことで、従来のシステムでは成しえなかった業務効率化が実現する可能性があります。導入直後は、既存業務と比較してシステムに不足を感じることもあるかと思いますが、長期的には Fit to Standard により既存業務をシステムに合わせて変えるメリットの方が大きいといえます。②バージョンアップ対応の容易さFit to Standard では、クラウドベンダーが提供する最新バージョンのシステムをそのまま使うことができます。すなわち、最新機能を迅速に取り入れて自社の業務を最新のICT環境に適合させることができます。クラウド版のSAP S/4HANAは、四半期ごとにアップデートされることを考えると、最新バージョンを大きな手間なく使用できることは非常に重要だといえます。一方、 Fit&Gap ではバージョンアップのたびに追加したアドオン間での調整が必要になります。アドオンした機能との互換性がなく最新の機能が使えないことで、柔軟性に欠けるレガシーシステムが出来上がってしまう問題が生じます。これは、本来、データ利活用の基盤となるべき基幹系システムが、肥大化、ブラックボックス化してしまう可能性につながります。③グローバル経営の促進世界的なクラウドベンダーが提供するSAPは、国境を超えてその業界で要求される標準的な機能を搭載しています。そのため、Fit to Standard の推進は自社の業務形態を業界標準に近づけることであり、グローバル経営を促進することにつながります。一方、 Fit&Gap では独自の商習慣を反映させていることから、事業をグローバルに展開しようとしたときにかえって足枷となってしまうケースも少なくありません。まとめ・SAPの導入方法はFit&GapとFit to Standardの2種類・Fit&Gapは現行業務に合わせてSAPシステムを変更する方法・Fit&Gapはオンプレミスとプライベートクラウドのサーバー運用形態で利用される・Fit to StandardはSAPシステムに合わせて現行業務を変更する方法・Fit to Standardはパブリッククラウドのサーバー運用形態で利用される・最新のトレンドはパブリッククラウドの導入方法であるFit to Standard告知SAP Consult Labo 「現役」SAPコンサルタントが提供する、未経験からのSAPコンサルタント転職アカデミー 未経験からのSAPコンサルタント転職を支援するサービスをご紹介します。 SAP Consult Laboでは、講義を通してSAP FI資格取得、やSAPコンサルタントとして必要な知識の習得が最短距離で実現できます! SCLでの受講ゴールの達成により、認定資格に必要な知識を身に着け、将来の年収アップ、市場価値の向上、理想のキャリア形成の実現も可能です。 詳しくはこちらをチェック! 公式HP:https://sap-consultlabo.com/ 無料面談も実施中です!お見逃しなく! LINE友達追加:https://line.me/R/ti/p/@572euexq?oat_content=url