2022年にリリースされ、SAP S/4HANAの活用において切っても切り離せない存在となった、SAP BTP。この記事では、SAP S/4HANA活用の観点からSAP BTPの機能や特長、導入事例をご紹介します。 【SAP初学者向けアカデミー受講生募集】 「現役」SAPコンサルタントが提供する未経験からのSAPコンサルタント転職アカデミー SAP BTPとは SAP BTPの概要SAP BTPは、SAPアプリケーション向けに最適化された、複数の機能を統合して提供するプラットフォームです。具体的には、アプリケーション開発、オートメーション、インテグレーション、データ&アナリティクス、人工知能の5機能が含まれいます。これたの5機能によって、SAPアプリケーションの拡張と投資効果の最大化、クラウド移行の促進、既存のSAPシステムとクラウドサービスのギャップを埋めるといった重要な役割を果たします。BTPの歴史SAP社が提供するクラウドベースのPaaS型システム基盤は、2012年にSAP HANA Cloud Platformとして登場し、2017年にSAP Cloud Platformとなった後に、2022年に現在のSAP Business Technology Platformへと進化しました。 SAP BTP登場以前、アドオン開発はERP内部にて実施しており、ERPの肥大化やバージョンアップの難しさが課題となっていました。しかし、SAP BTPでは、アドオン開発をERP外部のクラウドプラットフォームにて行いERPと疎結合させることで、ERPに直接影響を与えることなく追加機能を開発できます。そのため、従来発生していたERPの肥大化やバージョンアップの難しさなどの課題を回避できるようになりました。 SAP BTPの機能 SAP BTPには、①アプリケーション開発、②オートメーション、③インテグレーション、④データ&アナリティクス、⑤人工知能の5機能があります。 ①アプリケーション開発 LCNCツール※からプロ向け開発環境まで、幅広いアプリケーション開発機能を提供します。SAP Fiori、SAPUI5、Cloud Application Programming Modelなどのフレームワークを活用し、SAP製品と連携するカスタムアプリケーションを効率的に開発できます。また、マイクロサービスアーキテクチャやコンテナ技術といったソフトウェア開発技法にも対応し、柔軟で拡張性の高いアプリケーション開発が可能です。 ※LCNC(Low-Code No-Code)ツール:複雑なプログラミングスキルを必要とせずにアプリケーションを開発できるプラットフォーム。ビジュアルなインターフェースを使用し、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で開発が可能。 ②オートメーション SAP Build Process Automationや iRPA(Intelligent Robotic Process Automation)などのツールを提供し、ビジネスプロセスの自動化を実現します。ドラッグ&ドロップのインターフェースでワークフローを設計し、RPAボットと組み合わせることで、複雑な業務プロセスも効率的に自動化できます。これにより、人的エラーの削減や処理時間の短縮が可能になります。③インテグレーション Integration SuiteやSAP Master Data Integrationなどのツールを活用し、SAP製品間やサードパーティシステムとのシームレスな統合を実現します。APIマネジメント、データ統合、プロセス統合などの機能を提供し、クラウドとオンプレミス環境を問わず、複雑なシステム間連携を効率的に構築できます。※インテグレーションについてさらに知りたい方はこちら 。Integration(統合)とは?初心者でもわかる統合機能の概要・構成・操作手順を徹底解説![SAP BTP(Business Technology Platform)] ④データ&アナリティクス SAP HANAやSAP Analytics Cloudなどのツールを活用し、大規模データの管理や高度な分析機能を提供します。リアルタイムデータ処理、予測分析、ビジネスインテリジェンスなど、多様なデータ活用ニーズに対応します。これにより、データドリブンな意思決定や業務最適化を支援します。 ⑤人工知能 SAP AI Business ServicesやSAP AI Coreなどのサービスを通じて、AIや機械学習の機能をビジネスアプリケーションに組み込むことができます。自然言語処理、画像認識、予測モデリングなどの技術を活用し、業務プロセスの効率化や意思決定支援を実現します。また、SAP Conversational AIを使用してチャットボットを構築することも可能です。SAP BTPを用いた開発の特長① S/4HANA拡張アプリケーション開発の大幅効率化が可能 SAP BTPでは、SAPアプリケーションとスムーズかつ安全に接続できる仕組みや、LCNCツールや事前定義済コンテンツといったツールが豊富です。そのため、他社のクラウド開発環境と比較して開発効率が高く、コストや工数を大きく削減できます。 ② S/4HANA拡張アプリケーションとSAP S/4HANAとの連携作業の大幅効率化が可能SAP BTPでは、SAP S/4HANAのAPI※やイベントを検索し仕様確認や文書照合ができる「APIカタログ」を活用できます。加えて、目的のAPIについてワンクリックでテストできる「APIサンドボックス」や、開発ツールとの連携APIを自動生成できる「コード生成」といった機能が存在します。これらを活用することにより、拡張アプリケーションの開発のうち、SAP S/4HANAとの連携作業を効率的に進めることができます。 ※API(Application Programming Interface):アプリケーション間で情報をやり取りしたり、機能を共有したりするためのインターフェース ③ SAP S/4HANAと外部システムを連携するアプリケーションの構築が可能 SAP BTPとSAP S/4HANA間のイベント連携機能を用いることで、 SAP S/4HANAの業務処理イベントをトリガーに外部システムとリアルタイムで連携するアプリケーションを構築できます。具体的には、事前にS/4HANAにて任意の業務処理に対してイベントを設定しておくと、イベントが実行された際に処理情報をメッセージとしてSAP BTPのイベント連携エンジンへ通知します。その後、イベント連携エンジンが受信したメッセージに応じて、拡張アプリケーション内、あるいは外部システムにて後続処理を実行します。 活用事例 事例1: Uniper社(ドイツ、エネルギー業界) Uniper社ではSAP BTPを活用し、既存のSAPアプリケーションを拡張・統合しました。システム面では、モバイルアプリの導入やAI・機械学習の活用により、プロセスの自動化と新しいワークフローの作成を実現しました。業務面では、リモートワーク申請の処理や調達プロセスが効率化され検査時間が半減しました。結果として、リモートワーク申請処理の生産性が70%向上し、人事コンプライアンスと二重課税リスクが25%低くなりました。また、購入申請の処理時間が80%短縮され、エラー率も5%まで減少しました。 事例2: MOD Pizza社(アメリカ、飲食業界) MOD Pizza社ではSAP BTPを活用し、SAP SuccessFactorsソリューションとSAP S/4HANA Cloudを統合しました。システム面では、採用から退職までの人事プロセスと関連業務プロセスを自動化し、正確なリアルタイムデータを全社で活用可能になりました。業務面では、新規採用者の経費支払いの自動化や、採用・オンボーディングプロセスの摩擦が解消しました。結果として、データ入力や統合エラー分析の作業時間が週15時間削減され、データ保守コストの削減と将来の拡張性確保にも成功しました。 まとめ ・ SAP BTPとはSAPが提供する包括的なクラウドベースのPaaS型システム基盤 ・ SAP BTPの機能は、①アプリケーション開発、②オートメーション、③インテグレーション、④データ&アナリティクス、⑤人工知能の5つ ・SAP BTPを用いた開発の特徴は以下の3つ ーS/4HANA拡張アプリケーションの開発を大幅に効率化できる ーS/4HANA拡張アプリケーションとSAP S/4HANAとの連携作業を大幅に効率化できる ーSAP S/4HANAと外部システムと連携するアプリケーションを構築できる 告知【SAP認定コンサルタント資格のメリット】 ・認定資格を未取得の人との市場での差別化を図れる ・認定資格を取得することによる自信とスキルを持ってタスクを実行できる ・価値の高い認定資格を持てば、高い賃金や料金を得ることができる 公式HP:https://sap-consultlabo.com/ 無料面談カウンセリングはこちらから